佐藤春夫記念館・中上健次没後20年、特別企画展(記:輝やん)

佐藤春夫記念館へ行ってきた。来年の2月17日まで「中上健次没後20年」の特別展示が開かれている。

午前中に行くつもりが、あれこれ急用が舞って午後4時20分に到着。連休でもない日曜日の夕刻、客は他に居ない。

さすが館長の辻本雄一先生が企画したことで、見映えだけでなく想像をかきたてるような展示がならぶ。先ず目を惹くのが各コーナーに設置された4枚の大きなパネル。中学時代の『みどりが丘』や新宮高校文芸部の『車輪』デビュー前の『文藝首都』…、健次さん直筆の雑記ノートや大きな毛筆書や長女紀ちゃんへの手紙…なども興味深い。

四方から健次さんの活字と写真に一人囲まれた閉館までの30分。途中、初冬の寒さとは別のゾクゾク感が背筋を奔る。見張られている緊張感。遺された活字は生身の健次さんよりも怖い!

チラリと目にとめた記事から、かすかに憶えていた生前の言葉を一つ手繰りよせた。「沖縄にせよ東北にせよ、日本における最初期の植民地なんだ。その両端と付け根の熊野から考えるんだ!わかるか!…」二人で新宮から勝浦へ走る車中のことだ。まだ学生だった私、ほんまは解らないのに適当な返事をした。

健次さんの活字に見張られている一瞬のうち、東北と沖縄のことを改めて想い起した。