「熊野大学聴講生による熊野を語る会」第1回の内容報告③(記:管理人)

また前回の続きです。
作家・中上紀さんが、自作短編『蓮池』と中上健次作『青い朝顔』の
朗読を披露されました。声が良いからなのでしょうか。この方の朗読
には、聞く者の心を落ち着かせる効果があるようです。気が付くと、
こちら側の呼吸が朗読に同調するかのように深くゆっくりとして来て、
穏やかな気持ちで耳を傾けるようになります。癒しとしての音読。
ヒーリング・リーディング。新たな活動形態となるかもしれません。
それはともかく、『青い朝顔』は中上健次作品の中ではマイナーな存
在で、最初はフランスにて仏訳版で出版され、その後日本で日本語版
が出版された,との経緯を持つものだそうです。
一方、紀さんの『蓮池』は、中上健次の小説世界の題材を使用して書
かれた唯一の作品で、紀さんがアイオアで行われた「インターナショ
ナルライティングプログラム」(かつては中上健次も参加したことが
あるそうですが)に参加した際に、英語で書いて朗読し好評を得て、
のちにご自身で日本語訳されたものであるとのこと。そのように伺う
とこの二作品は、内容の関連性ばがりか、成り立ちにも因縁的な類似
性が見て取れ、改めて”血”を感じます。